ソウルの気になる人たち
こんばんは、“リナちゃんと夜を盗もう”(※1)の時間がやってまいりました。 今日のゲストは、りうめいさんです。
リナ:こんばんは、今日はりうめいさんのソウルの街の魅力についてお話を うかがいたいと思います。よろしくおねがいします。
りうめい(以下りう):あ、リナちゃん、こんばんは。 ソウルの街の魅力・・というより、今日は2年間の滞在の中で気になった人たちについてお話できたらな、と思ってます、よろしく。
リナ:それは楽しみですね・・気になる人って、具体的にどんな人たちをいうんですか??
りう:そうですね、ある場所で必ず会える、というか見られる人。基本的にある一定の場所で、何か“活動”をしている人のことかな。その活動のテンションの温度差は激しいんだけどもね。あと存在自体がすごい人。いるだけですごい人・・ これはちょっと言葉を選ばないといけないのかもしれないけれども、ソウルの街・・特に地下鉄や駅周辺には物乞いが結構いるんですよ。いろいろな物乞いがいるんですけども。これは地下鉄に乗ってみないことにはね。
リナ:活動・・ですか?テンションの温度差・・うーん、わかるようなわからないような。
りう:うーん、じゃあまずは宣伝マンからいってみようかな? 明洞のメインストリートの真ん中らへんにutoozoneっていうファッションビルがあるんだけども、その裏の通りのコルモク(小さい通り)には食堂がひしめいているのね、だから日本人観光客を呼びこまなくっちゃ!ってわけ。 ウエスタンな格好(たまに伝統韓服)した小柄のアジョシが小ぶりのお立ち台にあがって、『カルビー サンギョプサル』を連呼するんだけども、そのカルビとサンギョプサルの間のとりかた、それにあわせた体の動き、派手ではないんだけども、 とても印象に残るね、あのアジョシは。 気がつくと自分も『カルビー サンギョプサル』とつぶやいている(笑)。 そして明洞餃子(※2)をめざす、みたいな。 あと、南大門市場の6番ゲートに向かう途中に児童服の店があるんだけども、ここにもいるのね、宣伝アジョシが。でこの人も格好がウエスタンなの。MESAっていうビルの横らへんにある三益(サミッ)ファッションタウンの入り口にも、この手のアジョシがやっぱりいたと思う、ウエスタンのアジョシが。鼻眼鏡をかけていたかどうかは忘れたけども・・・
リナ:ソウルでは宣伝マンは、カウボーイスタイルが定番なのかな?
りう:もしかしたらあのフリンジ具合はエルヴィスを意識したものかもしれない。
リナ:ああ、なる。ラメラメとかフリンジは確かにエルヴィスかも!
りう:南大門市場といえば、地下鉄4号線会賢(フェヒョン)駅があるんだけど、ここの地下も気になる人ばっかりで・・・まずは小さな串団子売るアジョシね、昔なつかしの・・ってとってもレトロな木の箱で、ガラスが張ってあるんだけども、あの箱がほしくて。あと靴のワックスを売るアジョシも毎日がんばってたなあ・・ ホントに彼の靴がおそろしいほどピッカピカで。その語り具合は、黒い革靴持ってたら絶対買ってるなあ・・って感じのスムーストークで。
リナ:スムーストーク(笑)
りう:で、中でも“封筒アジョシ”は友達の間でもかなり人気だった! その友達と二人で大ブーム。 『ピョンジ ポウトゥガ ペッチャンエ チョノン』ってずーーーーーっと言ってるの。
リナ:それどういう意味ですか?
りう:手紙用の封筒が100枚で1000ウォンって意味なんだけど、あの南大門市場の喧騒の中で、“ペッチャン”に真心をこめてつぶやいている・・そんな感じ。売るというよりも自分に向かってつぶやくことで、自分の存在を確かめているみたいな・・」
リナ:で、内に向かってつぶやかれているその文句が、そんな喧騒の中でも りうめいさんの耳にクリアに聞こえてくるってことですね?
りう:クリアにね(笑)、友達ももう一度聞いたら忘れられないって、二人会うと まずそのアジョシの真似。しかし売ってるものが地味だよなあ・・封筒一本勝負だもんなあ。
リナ:私の友達も韓国に行ったとき不思議がってた。市場でもない普通の通りでおばあさんがゴム手袋オンリーとか、ゴキブリとかねずみの駆除グッズを売っていて びっくりしたって。で、友達はびっくりしつつも、タオルだけ売っているおばあちゃんから1枚500ウォンのタオル買ったって。
りう:結局買ってるんだ(笑)、やっぱり需要があるから供給があるんですね。
リナ:ねえ・・・、で神の手でコントロールされて、バランスが取れていると。
りう:ソウルのストリート上に経済の理論を見出だせると。ちなみに地下鉄に乗ってて歯ブラシとかホコリ取り、扇風機カバー買っちゃったもんなあ、くやしいけど(笑) でもカニの絵の描いたパス(シップ)と、懐メロCDは買わなかったけど!
鍾路(チョンノ)・仁寺洞(インサドン)・乙支路(ウルチロ)
リナ:りうめいさんの主な活動場所は鍾路(チョンノ)だったと聞いてますが。
りう:はい、ソウルは漢江(ハンガン)という大きな河が真ん中を流れていて、 その河を境に、北を江北(カンブク)・南を江南(カンナム)に分かれるんですね。で、江北の繁華街はチョンノです。新宿のような雰囲気があるわけです。 通りに沿って、屋台がバーーと出て、お店もいっぱいあって。
リナ:毎日のように通ってたんでしょう?
りう:ええ・・YMCAとか学院がそこにあって、太らないように忠武路(チュンムロ)から乙支路(ウルチロ)を横切って歩いて通ってましたねえ、その後新村(シンチョン)や梨大(イデ)にいたときも毎日のように通いました。 で、印象に残っている人はたくさんいる(笑)
リナ:時間はあります、どうぞ、お話ください。
りう:はい・・まずはチョンノ2ガに大きな交差点があるんだけども、ここはインサドンの入り口、タプゴル公園のあるところ、この交差点にいつも出没するハルモニ(おばあちゃん)二人がすごかった。
リナ:ハルモニ?
りう:はい。横断歩道で信号を待っている人たちの前にスウーーと立って、 大きくもなく小さくもない袋を差し出して、微妙な表情をして・・・
リナ:募金ですか?
りう:募金もこの街には多いけども、そのハルモニたちはプロの物乞い。 二人とも、絵的にはヒットした韓国映画『チブロ・・(家へ・・)』に出てくるハルモニまんまなのね、しわしわなんけども、お茶目なかわいい感じのおばあちゃん。 白髪の長髪をおだんごにして、まあ格好はかなり汚れてるんだけど。 ハルモニAは、とってもちっちゃくて、守りたくなるくらい。 けれども、その動きのすばやさと言ったら!哀れな表情を浮かべて信号待ちの人全てに袋を差し出す。信号が長ければ2回目のアタック(笑) お金をもらっても、何も言わない。 何事もなかったかのようにまた別の人の前に立つ。 いやあ・・それ見ていて一人で腹立ててました・・ワタクシ・・
リナ:少しは感謝しろって感じですか?
りう:ははは、そうかも。 ハルモニBは・・しわしわの顔をさらにしわくちゃにして、今にも死にそうな悶えの顔するんですよ。口あけて、今にもアイゴーと天を仰がんばかりの。 で、Bもお金をもらったとたん、もう次の人の前に。 このハルモニBはたくましい・・・交差点に大きなヤングカジュアルのお店があるんだけど、ここは若い人たちの待ち合わせ場所によく使われてるみたいで、若い人がたくさん待ってるんですよ、入り口で。ちょうどよい2,3段の階段もあって。 で、そこに一仕事終えたハルモニBが休んでいる(笑)
リナ:それじゃあかなり目立ちますよねえ!若い中にいきなりハルモニが座って 休んでいる・・・
りう:ハイ。でしかもタバコも吸っている。
リナ:休憩モード全開。
りう:ええ・・で、もっとショックだったのは、この交差点にある小さなキオスクみたいな売店のアジュンマと談笑していたところを目撃したことです。 キシリトールのガムの箱を持ってたんです。 つまり・・その売店でガムを買ってそれを通行人に色つけて買ってもらう・・それはまあいいんだけど、でも活動場所から少しは離れたところでこそっと買えよ、とプンプンしちゃいましたッ!
リナ:そんな怒らないでくださいよ~りうめいさん。りうめいさんには関係のない人たちじゃあないですか~。
りう:いやあ・・陸橋のところで一日中拝むような姿勢でいるお兄さんとか、あの、ほら、東部バスターミナルのあるカンビョン駅出口近くでですね、信号待ちするところに体をいっぱいに投げ出して横になっているアジョシとか、東大門市場の地下鉄入り口にいる呪文(のような言葉)をひたすら唱えながら、ずっと拝んでいるアジョシとかに比べたら、なんてあつかましいのかと。
リナ:でも信号待ちしている人万遍なく袋を差し出すというのも、スピードがかなり要求される技だとおもったりもしますけど・・
りう:動きはスローだけどしっかり回っている。ハルモニってすごいと思います。 ハルモニ、あなたはアリ?と突っ込みたくなる自分の2倍というような荷物を 背負って歩いているのをよく見かけますね、韓国では。
で、話は変わるんですけど拝む姿勢でじっとしているアジョシ系。 お金が彼のザルの周りにちらばっていることがたまにあるんです。 ワタクシ知らなくて、あらあらザルからはみ出しちゃったのね、と思って10ウォンを親切心でいくつかザルにチャリーンって入れたんです。 そしたらちょこっと顔をあげてザルの中のお金を取って、チャリーンって投げた(笑) なんかむかっとしちゃって、またそれをチャリーンって入れたんです。そしたらまたチャリーンって。
リナ:りうめいさんソウル滞在時よっぽど暇なんだってことがバレバレですね。
りう:いやあ(少し照れる)・・で、やっとわかったんですね、その10ウォン硬貨はあくまでも演出の10ウォンだと。
リナ:演出の10ウォン硬貨。
りう:なんとなくお金がちらばっていたら、いい雰囲気を演出できるというか・・ ザルに何も入っていないより、ザルからちょっとはみ出た10ウォン硬貨があることで雰囲気が出る。
リナ:なんとなくわかるような気がします。
(つづく)
※1 小学生の時に妹と、カセットに録音する遊びをよくしていたのだが、声色を使ってワタクシはリナちゃん、妹はルナちゃん(後復活、後に友人)でラジオの番組ごっこをしていた。その番組名。
※2 カルククス(韓国風うどん)の有名店、茹で上げ汁を使ったにんにくのきいたスープと麺は人気。キムチもおいしい。ついでにマンドゥ(肉饅頭)もおいしい。
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