この日もひどくブルーで、大黒ふ頭にある某所でのアルバイトを終えてバスを待っていた。 ベイブリッジへと向かう高架下を大型車が勢いよく通り過ぎていく。 時刻表というものをあまり見ない。来たバスに乗ればよい。 バス停のすぐ目の前に仕事着を売るお店があって、軒先はアーケードになっていた。 先ほどバスの窓にななめの線を描く雨は、そのときよりも勢いを増して強く降る夕立に変わった。 雲は負け犬が退散するかのよう。そんなスピードで走り去っていく。 金魚模様のハンカチをひろげて頭にのせ、横断歩道を渡った。 お店が2,3軒入っているコンクリートの建物で、青いトタン屋根、壁の上部にシンプルな四角模様の浮き彫りが施されていて、それは直線的にいくつも並んでいる。 この建物が昭和初期のものだったらいいなあ、と建物をひとまわりすると路地へ入った。 パチンコ屋の前で雨が止むのを待つことにした。 自動ドアが開くたびに、中から大音量の音楽とありとあらゆる電子音、パチンコ玉の音が流れてくる。タバコの煙も流れてくる。 ダラリとのびきった短パンをはいているおじちゃんが出たり入ったりしているし、きったないばあさまがそのたびにチラチラと見えて気になってしょうがない。 平日の夕方から赤い顔しているおじちゃんとおばちゃん。とても楽しそうに見えた。 私のブルーがウキウキに変わっているのがわかった。 自分だけに聞こえる声で、やっぱこういうノリだよなあ、とつぶやいていると、 「すぐに止みそうだけどねえ、この雨」 とふいに後ろから声が聞こえた。 振り返ると、安っぽいアクリルの大きなスカーフを頭からかぶったばあさまが、私に声をかけているんだか独り言なんだかわからない微妙な距離感をもってそこにいた。地味派手な花柄のワンピースに、しわしわのスカーフ。 「夕立ですから、すぐやむと思いますが・・・・」 私も聞こえるか聞こえないかの声で一応答えた。しばらく私とそのばあさまは黙って、ブシャブシャと降る雨を見ていた。 「傘でも借りてくかね。」 とそのばあさまは“さかなや”に入っていった。いいなあ、いきつけなのかな トイレからの匂いがきつい生麦駅。
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