読みきり
死なせる
死なせる
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朝、寒くて目が覚める。小さい秋を見つけて喜ぶ時期が来たと思っていたら、あっという間に街は赤や黄色に色づいて、冷たい風が吹くたびに、スカートをはいたことを後悔する。 小さな市場通りにでた。赤い唐辛子が道路に広げられている。店のビニールのひさしの所にも赤唐辛子だ。アジュモニたちは談笑しながらぎんなんの殻をむき、にんにくをむき、ふきの筋を取っている。 どこからか、子供の弾く下手なピアノが聞こえてくる。アジョシたちも将棋をさしていて、子供は子猫がミルクを飲むのを不思議そうに見つめ、荒い手つきでその子猫を何回もなでている。 急な坂が見えた。大きなダンボールを抱えた、赤いワンピースの女の子が立っている。 私は何も言わずにただ見ていたのだが、その女の子が、 ダンボールから排水溝にうつる彼女の視線を追った。排水溝に落ちそうになっているよれよれの鶉に視線がぶつかった。 5,6歳に見えた彼女は、どうやって、いつ『死なせる』という言葉を覚えたのだろう。 |