3. (学生の時の日記より) たまたま市立図書館で、ジャズ評論家としても有名な平岡正明責任編集の『横浜ハマの毛B級譚』を見つけてしまった。 ハマ野毛という、野毛を愛する住民らがB級のタウン誌を作っていて、大道芸の街・野毛を全国(気合はね)に広めようと作られたらしい。それをまとめたのがこの本である。 開けば平岡氏の友人田中優子先生(※1)も書いていた。元ゴールデンカップスのギタリスト、横浜で知らない人はいない(!?)羅紗メン“メリーさん”(※2)、美空ひばり、ジャズ喫茶ちぐさの親父さん等について、かなり面白い視点で地元の人々が愛情たっぷりに語っている。 日の出町、黄金町、寿町、福富町と名前を聞いただけで嫌な顔をし、なるべく京浜急行に乗らないようにしていたのだが。 この本に出会い、“え、野毛って面白いんじゃん??”とすっかり方向転換。いつも石川町(中華街と元町)からまっすぐ帰っていたのをやめて、野毛を散歩コースにした。
仏具店が多い理由もわかった。動物公園の近くに神社があり、坂を下る途中に隣り合うようにして 寺もあるのだ。神社の急な階段からは野毛を一望でき、お洒落なベイサイドも見えて、ここなら “ジモティハマっ子がそっと教えてくれたナイスビュースポット(Hanakoあたりで)”として紹介できると踏んだぞ。 場外はJRAと立派な無味無臭なビルになっているが、周りの風景は小さいときに見たそれと変わっていない。串揚げの屋台のオヤジやノミ屋のオヤジの周りには人が集まっていて、ポツンポツンと看板もちのオヤジがいて、素敵にディープ。 ストリップ劇場“日の出ミュージック”は最近店をたたんでしまった。外に放り出してあった真っ赤なマットレスが切なかった。(※3)
私は男じゃないので(もし男だとしても多分行ってなかっただろうけど)、フーゾクな店が軒を並べる横丁を楽しむことはできない。 けれども“柳通り”はなかなかの風情があってよい。ここは秋に虚無僧行列が見られる。 オレンジの灯りに柳が揺れて、なのに飲み屋とソフトなフーゾク店の通り。歩くのは楽しい。 月が出ていたりしたらもっと詩的だ。
B級譚は実に影響を受けた本だ。忘れられない。絶対に忘れるもんか!バカな自分は貯金しようとした現金2万円を、“ちょっとの間だし”としおり代わりにはさみ、そのまま返しちゃったのだ。
※1 大学教授・江戸に造詣が深く美人 ※2 真っ白な化粧は鈴木その子といい勝負の、元ストリートガアルのおばあさん。 あの当時でも客を取ろうと街を歩いていたのか?服装も派手で人目を引いた。 ※3 新装開店して営業を続けています。
|