虚言症
No.5



 梨花へ
 

 

居候にも我慢の限界というものがある。
頭の中で、このフレーズは韓国語でなんと言うのか、どういえばちゃんと伝わるか作文の整理。
私の一言に反応したのは、大田男子であった。彼は起き上がったようで、動揺振りが暗闇とはいえ十分伝わってきた。
そのとき。

『フン』
と鼻で笑う声が聞こえた。Mさんである。
彼女は電気をつけると、イスにかけてあった上着をはおって、カバンの中から財布をとりだした。
「また始まった!うるさいのがいるから、私たちほかのところに行きましょう。」
「ちょっと、何その言い方。自分からタダでここに住んでもいいっていってきたんでしょ、出てってほしいならちゃんと言いなさいよ。」
「ちゃんと話したほうがいいと思うけど・・」←大田男子
「いいの、いいの、ほっといて。さ、早く。」
今まで見たことのなかった冷たくてこわーい顔したMさんは、たばこに火をつけてイスに座った。
「はっきりいうけど、りうめいのいってることおかしい。どうしてそう私を混乱させるの?」

アイゴー(心の叫び)。

「おかしいのは、Mさんのほうだと思うんですけど!おかしくなる前に家でますから。
はいはい私はどうしようもない女です。出て行ってほしいならそういえばいいのに。」

Mさんは、大田男子の手を引っぱり、バタンと玄関をしめて出て行った。

翌朝、荷物を急いでまとめた。前から早く家を出るようにすすめていた友人が、朝早くから荷物をまとめるのを手伝ってくれた。ラッキーなことに、回基は学生街。歩いて5分くらいで下宿街があった。友人がてきぱきと、2,3軒の下宿に連絡してくれて1週間単位で貸してくれるところを見つけた。


もうこれからは一人部屋に住もう。1週間もあれば新村・梨花大学周辺の下宿が見つかるだろう、と一時的にそこに滞在することになった。
しかし1週間で15万ウォン、4畳、太陽熱のシャワー、ご飯激マズと最悪の条件。
ダンボールに囲まれて、私は本当にいろいろ考えた。2日後には梨大後門のほうに下宿を
見つけて、1週間後にちゃんと引っ越すことができた。
そこもそこでトラブル続出であったが、人間関係が一番煩わしいことを身をもって知った
私は一人で快適に住めるのだから・・と前向きに考えるようになった。

逃げるようにあの家を出てきたけれども、いい経験だと今は思っている。

おしまい