マル秘色情めす市場

'74(日活)
(監督)田中登
(脚本)いどあきお
(音楽)樋口康夫
(出演)芹明香、花柳幻舟、夢村四郎、岡本彰、宮下順子、萩原朔美、高橋明、絵沢萌子

 

映画マイベストは何ですか?という質問にすぐに答えられるものでもないだろう。
ただ、この映画を見たときの衝撃があまりにもすごすぎて、
マイベストは何ですか?と聞かれたら、この映画の名前を挙げるかもしれない。
タイトルがタイトルだから、楽しみに見た人はさぞがっかりするだろう。ちっともエロじゃないので。監督は最初タイトルを『受胎告知』にしたかったそうだ。日活ロマンポルノの最高の問題作!

釜が崎。一人のやせた女がワンピースをだらしなく着て、虚ろな表情でを歩いている。まるでたった今強姦にあったかのように。
彼女の名前はトメ(芹明香)。
この町で体を売って暮らしている。母(
花柳幻舟)も売春婦で、たまに客のとりっこもする。そして障害を持った弟のサネオ(夢村四郎)一人。姉と弟、父親はおそらく違うだろう。
母は、歳も歳なので客に飽きられないようにと必死である。
そんな母をトメはなんとも思わない。彼女は弟のサネオ(
夢村四郎)をよくかわいがっていた。こんにゃくであそこをくるみ、射精させる。

映画は二つの物語で構成されている。
一つは新世界・通天閣周辺のドヤ街を舞台に母娘娼婦が客争奪戦(!?)、もう一つは置屋に売られる女(宮下順子)と男(萩原朔美)の悲運。
そこに住む人々の生活が悪夢的イメージの連続で淡々と語られていくという内容。
社会の底辺をあまりにもリアルに描いた傑作。

途中モノクロからカラーに変わるのも新鮮。濡れ場ではないところがポイント(笑)
トメが弟に体を許した後、弟はひもで結わえた鶏を通天閣のてっぺんから落とし、自分はそのあと首をつって自殺をしてしまう。
それを見た時も、自分が客にやられている目の前で、母がセックス中につわりのために吐くのを見た時も、トメはあくまで無感覚。

芹明香の魅力がすべてといってもいいほど、彼女が素晴らしい。
宮下順子が萩原朔美とガスで膨らませたダッチワイフで爆死するエピソードなんて芹明香の前ではかすんでしまう。
彼女は、神代辰己の映画では欠かせない名脇役。私生活でも覚せい剤で何度もつかまっている。ぺたぺたの体、頭の悪そうな顔、斜に構えた態度、舌足らずで話す声、どれも魅力的で大好き。

釜が崎でカメラを回すのは容易なことではない。なので隠しカメラでのぞんだそう。74年当時のドヤ街の様子を映し出した貴重な映像ともいえる。
ここを舞台にした大島渚監督の『太陽の墓場』も当時のドヤ街を見ることができておすすめ。団玲子のひまわりワンピースとドヤの風景・・私はこういうイメージが大好きなの・・離れられない。

ビデオはアダルトコーナーにあるけど、是非借りて見てほしい。